文系の志望校はそのままに、医学部も受験したいという思いの前に現れたのが「防衛医科大学校(以下、防衛医大)」でした。防衛医大は、文部科学省管轄の大学ではなく、防衛省管轄の施設等機関になりますが、通常の医科大学と同じ扱いとされています。入学する学生は皆「自衛隊員」の身分となります。大学の場所も隣市である、埼玉県所沢市で、受験料は無料でした。防衛医大の場合、大学入試が国家公務員採用試験という扱いになるため、無料となっているのですさらに、受験時期が10月で、他の大学と大きくずれていたこと、共通一次(現・大学入学共通テスト)が始まる前に、受験ができるということも、魅力的でした。ただし、受けるのは簡単ですが、そもそも文系志望のまま理系の大学に受かる確率はあったのか、というところが問題です。実はわたしの母校は女子校ですが、理系に強い学校でした。その分、文系科目の日本史や世界史は、入試直前でもまだ教科書が3分の2しか終わっていないという有様でしたが……。防衛医大の理科は二科目でした。わたしはもともと、化学は好きで、中高の文化系部活は化学部に入っていたほどで、共通一次のためにもしっかり勉強していたので、あと一教科足すだけです。理系に強い母校では、高校の「生物」を中3までに学び終えていたので、その時の生物のノートを、受験日の朝に会場に向かうバスの中で一通り読み返しました。数学については、文系のわたしは、数Ⅲの授業を選択していませんでしたが、防衛医大の数学の入試問題は、4問のうち、1問が数Ⅲでした。そこで、その問題は最初から解かずに、それ以外を完璧に解答しようと、開き直ったのです。結果、なんと首席合格でした。まずは、医学を学ぶ権利を得たのです